2022年度の研究実績概要 (科研・基盤研究(B))

新規に採択された科研費「現代日本の戦争観・平和観とその歴史・文化的背景に関する社会学的研究」(基盤研究B、2022~24年度)の研究計画に着手しました。この新規科研では、基盤研究(A)「現代日本における戦争観・平和観の実証的研究」(2018~22年度)の研究成果を更に継承発展させ、現代日本の戦争観・平和観およびその歴史・文化的背景の構造的布置状況を解明し、今後の日本の平和・安全保障問題をめぐる討議に貢献しうる新たな学術的知見を創出することを目標としています。

初年度(2022年度)は、下記のように研究を進めました。

  1. 研究代表者・研究分担者・研究協力者が参加する計10回の定例研究会を、京都大学とオンラインのハイブリッド方式にて開催し、そこでの文献レビューにより、現代日本の戦争観・平和観や安全保障環境・安全保障政策に関連する、社会学・政治学・歴史学等の領域における最新の関連研究の知見を集約しました。
  2. 当初・本科研申請時には、第2年度(2023年度)に実施する、戦争観・平和観に関する意識調査の対象者として日本で生活する外国人を予定していましたが、2022年2月に開始されたロシアのウクライナ侵攻をはじめとする安全保障環境の激変や、日本の安全保障政策の大きな転換(安保関連3文書の改定など)を考慮し、定例研究会での慎重な検討の結果、対象者を自衛隊退職者に変更することになりました。自衛隊退職者は、かつては軍事専門職として防衛の任に当たり、かつ現在は一般市民として地域社会の中で生活しているという両面性をもつため、その戦争観・平和観を分析することにより、軍事専門職と一般市民との意識の乖離を架橋し、現代日本の戦争観・平和観に関するより客観的な知見が得られると予想されました。
  3. 上記2を前提として、第2年度(2023年度)に実施する意識調査の質問項目の詳細な再検討をおこない、調査票の素案を設計しました。調査票設計にあたっては、対象者が上述のような両面性をもつ人びとであることを念頭に置きながら、その戦争観・平和観やミリタリー・カルチャーの構造的布置状況の全体像を探索的に解明することに主眼を置きました。調査項目としては、安保関連3文書、安全保障環境、防衛政策、防衛体制、「日本有事」の可能性、および自衛隊の組織等についての考えを問う設問を中心としました。

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